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大光通信社 HOME > COLUMN > コラム06 広州モーターショー・異聞録<旅コラム>
広州モデルショーと見紛うほどの自動車ショーが開かれました。
11月22日~28日の1週間、中国・広州市の交易会展示館で開催された第9回広州モーターショーには、世界中の著名な自動車メーカーが最新車を出品し、期間中の人場者数は55万人に達しました。
陰りが予想されるなかで、ここだけは昨年以上の盛り上がりを見せました。
今や中国のデトロイトともいえるほどになった中国自動車産業の中心地が広州です。
東京モーターショーより一足早く開かれた、中国社会や経済の一端を表わすとも言えるこのショーの様子をカメラで追ってみました。
ショーが開かれた交易会展示場・A棟
3年前のリーマン・ショックへの景気テコ入れ策として、新興国・BRICSの中心とも言える中国が出したのは「家電下郷」「汽車下郷」という、日本ならエコカー減税にあたる補助金政策でした。
これは例えば家電製品を購入した場合は13%(最高3,500元)、汽車つまり車を購入した場合は購入額の10%(最高8,000元)を補助しようというもので、特に家電や自動車販売の促進と景気浮揚には多いに寄与したと見られています。
今年は財政負担の増加もあり、そうした「呼び水政策」は継続されませんでした。
加えて先進国の長びく不況、とりわけアメリカのドル流出と雇用不安、ユーロ危機に象徴されるヨーロッパの財政不安、さらには東日本大震災にあえぐ日本といった、そろっての低迷が、これまで好調とみられてきた中国経済にも影を落としてきています。
このため、中国国内での車販売の鈍化も懸念されているなかでの自動車ショーとなりました。
さて会場です。ここは歴史と伝統を誇る広州交易会の開かれる場所でもあります。
何しろ交易会は1957年からといいますから54年間、年2回開催で110回を数えています。
この会場ですから、さしずめ東京ビックサイトと幕張メッセを足したようなもの。
交易会ではA・B・C棟の3棟全てを使用しますが、モーターショーで使うのはA棟のみ。
実は自動車部品関連のショーがB棟で開かれたのですが、こちらは専ら業者向けという事で、11月22日~24日の3日間のみ。
交易会の入場料は360元(約4,500円)、これに対しモーターショーの方は40元(約500円)と、若者にも手の届く範囲。
歴史、伝統、スケールでは交易会には及ばないものの、人気では負けていません。
こうした入場者のお目当ては、最新モデルの車もさることながら、車の脇でニッコリ微笑むモデル嬢と各メーカーのカウンターでこれまた笑みを撤き散らすレデイ達。
どちらも選りすぐりの美女を集めた感じで、カメラ小僧のフラッシュの雨にもスマイルを絶やしません。
ショッピングやレストランでしばしば経験する無愛想さと比較すると、これが同じ中国人なのかと、にわかには信じられないほどの落差です。
もう1つはポーズをとる事に全く抵抗がないということ。
もともと素人でも写真を撮る時は大胆なポーズをとるのが中国人のスタイル。
結婚の記念写真など、日本人の感覚からすると見ている方が赤面するほどですから、モデルやそれ相応のアルバイトレデイという素養も考慮すると、ポーズをとるのもお手のものなのでしょう。
かくして、モーターショーならぬモデルショーが日本などとは比較にならない熱気のなかで繰り広げられてきているのです。
車のスタイルよりモデルのスタイルに視線が向かいがち
このモデル嬢らとは全く異なり、会場の通路でチラシを配るスタッフもいます。
こちらも極く気軽にポーズを決めてくれます。
ちなみに彼女らの日給は90元(約1,100円)との事ですから、華やかなモデル嬢には比べるべくもありませんが、学生のアルバイトとしてはまずまずと話してくれました。
オープンに給与を話すのも中国ならでは。
また、各メーカーの展示場には、最新車の展示に併せて、さまざまなカタログやパンフレットも配られていました。
このカタログも厚手の高級紙を使っているだけでなく、それを入れる袋も単にパンフを入れるだけに使うにはもったいないほど丈夫でおしゃれなもので、この袋の豪華さでも競い合っているかのようでした。
エコをメインテーマにカタログも控えめで、袋に至っては有料という東京モーターショーとはまるで違います。
チラシ配りのアルバイト嬢もニッコリ
このモーターショーに限らず、一般にこの種のイベントがTVなどで紹介されるのは、一般公開の前日までのマスコミ関係者等限定の日の様子なのです。
車の両側にモデルが立ってアピールするといった見慣れた光景もその時の1コマです。
ところが、一般入場者であふれ返るようになると出演している側も、人気を背にさらに盛り上げようと大胆なポーズをとったりして入場者の期待に応えます。
このあたりはまるで日本の比ではありません。
何しろ広州モーターショーの場合、毎日インターネットでモデルの人気投票ランキングが報じられ、「今日はスズキのモデル・韓嬢が1番だ」「いや韓さんは東風日産に移ったからニッサンがトップを奪った」といった具合です。
こうしたなかで異彩を放っていたのは、最高級車・ロールスロイスのコーナー。
ほとんどのメーカーが配置しているモデル嬢がここには一人もいません。
その代りにビショとスーツで決めた男性スタッフが中心になって対応し、希望者には臨時に設けた棚を開いて中に入れて説明しています。
試しにメインの展示車の価額を聞いたところ1,200万元(約1.5億円)と。
もっとも別のスタッフは同じ車を1,000万元(約1.25億円)と答えていました。
どうせひやかしと思ったのか、そのあたりはどうでも良かったのか、鷹揚に構えた様はさすがロールスロイスと妙な感心をしてしまいました。
スポーツカーの人気はどこも不変
もう1つモデルもパンフも置いてなくて、同じく、男性スタッフのみが対応していたのが日本の知る人ぞ知る光岡自動車。
こちらでも中心車・大蛇の価額を聞いてみました。
返ってきた答えは230万元(約2,900万円)と。
こちらはすこぶるぶっきらぼう。
でもほほ笑み一色の会場内で、よりによって日本メーカーのスタッフからいつものぶっきらぼうな中国風の答えが返ってきてかえって新鮮な感じがしたほどでした。
もっとも答えたのは中国人スタッフでしたが。
このほか、キャンピングカーや走るオフィスといった感じの車内にシャワールームやトイレ、FAX、なども備えた車も展示されており、135万元(約1,820万円)で売約済などとわざわざ札の付いた車もありました。
今や中国に代表される新興国の中間層といわれるクラスにとって、「自動車は年収」「家電は月収」とさえいわれます。
しかし、年収で車を買える層となると実際にはかなり限られてきます。
仮に大衆車のタイプで120万円くらいとすると、月収10万円という事になりますが、月10万円を夫婦共働きとはいえ、安定的に得られる人はそう多くはありません。
加えて最近の物価高で、食料品などは昨年比で軒並み20%近く値上がりしており、決して楽ではありません。
それに駐車料やガソリン代といった維持費もバカにはなりません。
金持ちの親に頼る「富二代(フーアータイ)」や「ケン老族(ケンラオズー)」といったスネかじり以外の若者にとっては、まだまだ高根の花というのが現実です。
それでも時にファッション感覚で夢や遊び心を高める場所として、盛り上がっているとも見る事ができます。
かつては、車を持つ事など考えられない夢のまた夢だった頃からすれば、今年で9回目を迎えたこのショーも、成長しつつある中国の一面を写し出しているといえるでしょう。
【文・写真】
坂内 正(ばんない ただし)
ファイナンシャルプランナー、総合旅行業務取扱管理者。元政府系金融機関で中小企業金融を担当。退職後、旅行会社の経営に携わり、400回以上の渡航経験を持つ。ロングステイ詐欺疑惑など、主にシニアのリタイアメントライフをめぐる数々のレポートを著す。
著書に『年金&ロングステイ 海外生活 海外年金生活は可能か?』(世界書院)
『情報と調査』編集委員